好きになるには理由があります

「わかった。
 次は三重県に連れていってやろう。

 斎王のように川に浸かって禊をして来い」

 川に浸かるくらいできるだろう、と言われ、
「そうですね。
 春になったら」
とぼんやり言ってしまった。

「……お前、やる気あるのか」
と言われる。

「いや、なんかあのドドドドッて感じの打たせ湯の迫力にやられまして。
 滝に行ったら、もっとすごいんだろうなと思って」
と言うと、

「お前に滝行とか、はなから無理なんだよ。
 いいから、さっさと俺と結婚しろ。

 そしたら、穢れたことにはならんだろ」
と言われる。

「いやいや、そういうもんじゃないですよ」
と言いながら、深月は小さく欠伸をする。

 眠くなったが、頑張った。

 陽太の方がもっと疲れているのに、運転してくれているからだ。

 船に乗っても、
「ベッドで寝てろ」
と陽太は言ってくれたが、残り少なくなったミルクコーヒーの缶を手にうつらうつらしながらも、深月は操舵席の後ろの白いソファに座っていた。