好きになるには理由があります

 古くて雰囲気のある浴場だ。

 二メートルくらいの高さから、お湯が落ちてきているのだが、なるほど、おばちゃんたちは湯の下にねそべっている。

 深月は空いている場所に行き、そっと落ちてくる湯に肩を当ててみた。

 湯が肩で弾き、耳許でバリバリ音がするし、痛い。

「むっ、無理無理無理っ」
と叫んで逃げて、常連っぽいおばちゃんたちに笑われた。

 立って湯を浴びている人も居れば、座って浴びている人も居る。

 ……無理。

 立つのも無理なのに、座るなんて無理。

 湯でこれなんだから、滝なんて……。

 やっぱり、私には修行は無理、とヘタレの深月はそうそうに結論づけた。

 だが、せっかく支社長が連れてきてくれたのだからと、頑張ってもうちょっとだけ肩を打たれてみる。

 あとは普通に湯に浸かり、まったりした。