好きになるには理由があります

「ともかく急げ。
 もうすぐ施設が閉まってしまうっ」
と言う陽太に、

 だから、なんの施設っ、と思う深月が連れていかれたその建物には、
『日本一の打たせ湯』
と書いてあった。

「……湯ですよ」

「だからなんだ。
 可愛いお前が冷たい水に打たれてるのなんか見てられるか」

「いや、禊に来たんですよね?」

「お前、日本一の打たせ湯を舐めるなよ。

 本当に痛いからっ。

 ツワモノの人たちは打たせ湯の下で寝そべるんだぞ。

 より高さがあって、死ぬほど痛いぞ。

 俺にはできんっ」
と陽太は主張する。

「いいから、早く行け。
 もう閉館時間だから。

 俺は男湯。
 じゃあな」
と入り口に押し込まれる。

 男湯って言葉がもうすでに呑気な感じなんだが、と思いながら、仕方がないので、深月も打たせ湯に入ってみた。