好きになるには理由があります

 


 細い山道を通り抜け、たどり着いた山間(やまあい)にひっそりとその村はあった。

 ……村。

「いや、温泉地じゃないですか? 此処」

 深月は今通り過ぎた看板を振り返りながら、そう訊いてみた。

 暗かったので、ぱっと見、山間の村に見えたが。

 よく見れば、立派な観光地ではないか。

 ……禊をしに来たんじゃなかったのか?

「この山の何処かにすごい滝があって、そこで滝行をしたあと、温泉であったまるとか?」

 そんなぬるい修行でいいのかと思いながら訊いてみたが、

「まあ、これだけの山に囲まれてるんだ。
 何処かにあるかもな、すごい滝」
と陽太はトボけたことを言う。