好きになるには理由があります

 


「そういえば、お前、日々、楽しく曲芸しながら通っているらしいな」

 深月が、よく冷えたノンアルカクテルの缶を開けてから渡すと、海の方を見たまま、陽太はそう言ってきた。

「いや、いつもあれに乗ってるのは、杵崎さんだけですよ」
と深月は答える。

 自分はミネラルウォーターをもらって呑んでいた。

「みんなが一緒に乗りたがっちゃって」
と言うと、陽太は笑う。

「じゃあ、今度、会社の備品として、四人乗りとか五人乗りとか買って置いておくか。

 ところで、もうすぐ着くぞ」

「早いですね」
とそういえば、見えてきた陸地の灯りを見ながら深月は言う。

「ああ、陸に上がってからがちょっと時間かかるからな。

 急ぐぞ。

 早くしなければ、施設が閉まってしまう」

「……施設?」