好きになるには理由があります

 


 深月は、清春に竹箒で突かれている陽太を見ていた。

「帰れか……。
 恋に破れたから、おみくじ引いて帰る」
と陽太が言い出した。

「破れたんですか?」
と思わず訊いてしまい、

「破れてないのか?」
と訊き返される。

 いやいやいや。
 帰れって言ったの、清ちゃんですからね、と思っていると、

「お前も引け」
と社務所にあるおみくじのところに連れていかれた。

「でもこれ、うちの神社のですよ」
と山積みのおみくじの載った三方(さんぽう)を見ながら深月が言うと、

「だからなんだ。
 商品を売る奴が使わないでどうする。

 自社製品に自信がないのか」
と陽太は言う。

 いや、作ったのうちじゃないんですけど、売ってるだけで……と思いはしたが。

 陽太の迫力に押され、結局、引くことにした。