好きになるには理由があります

 ひんやりとした空気が下の暗い空間から流れてくるが、背中は日差しでぽかぽかしている。

 そのとき、一緒にしゃがんで猫を見ていた深月がこちらを向いて、ふふふと笑った。

 なんか……こういうのもいいな、と陽太は思う。

「今までは船が一番落ち着く場所だったんだ」

 猫と深月を見ながら陽太は言った。

「会社からも日常の雑事からも切り離された俺の楽園。

 でも、今は、船もお前が居ないとなんだか物足らないし、つまらない」
と言うと、深月は赤くなり、俯いた。

「……ぎゅーっとしていいか?」

「え? ああ、野良だから逃げるかも」
と深月が猫を見て言う。

「莫迦。
 お前に決まってるだろ」