好きになるには理由があります

 


 仕事の合間、深月が引き継ぎのために支社長室を訪れると、陽太が言ってきた。

「昨日、つくづく思ったんだが。
 舞っているお前をみんなに見せたくないな」

 それでは祭りになりませんが……と深月は思う。

 深月の舞が導入部というか、神楽の始まりだからだ。

「お前は舞っているときは五割増し、いい感じに見える。
 衣装を着たら、更に二割だ」

 ……元の私は何割なんでしょうね、と思ったとき、陽太が訊いてきた。

「ところで、日曜は本当に忙しいのか」

「あー、いつも清ちゃんに任せきりなんで。
 おじいちゃんもそろそろ退院だから、荷物も片付けに行かないと」

 そうか、と陽太は言う。

「水垢離か滝行にでも連れてってやろうかと思ってたのに。
 お前が穢れたのは、俺の責任だし」

 水垢離か……と思ったとき、後ろから声がした。

「水垢離なら、船から突き落とせばいいんじゃないですかね?」

 わっ、と振り返る。

 杵崎が立っていた。