好きになるには理由があります




 その頃、杵崎は自転車屋さんの前に居た。

 じっと見ている。

 ……じっと見ている。

 じっと見ている……。

「あ、あの、閉店なんですけど」
と困ったように中から出てきた店員が話しかけてきた。

 見つめたまま動かないので、どうしたものかと思ったのだろう。

「いや、また来ます。
 すみません」
と言って、杵崎は去っていった。