「あ、杵崎さん」
異動に関する今後の日程について訊いてみようと秘書室の近くまで来た深月は、杵崎を見つけた。
杵崎は何故か振り返り振り返り、支社長室の方を見ている。
「どうしたんですか?」
と訊くと、
「いや、今、支社長がスマホを見て、にやついてて」
と言う。
「……怪しいですね、愛人でしょうか」
「愛人、お前だろ。
お前がなにか送ったんじゃないのか」
と問われ、深月は、いいえ、と答える。
おかしいな。
さっきまで、神楽のグループで話していたはずだが。
まさか衣装合わせで、にやついてたとか?
めちゃめちゃ、やる気だとか?
と深月が稽古中の生き生きとした陽太を思い出していると、その陽太が封書を手に支社長室から出てきた。
「支社長」
と深月は陽太を呼び止める。
「あの、なんでスマホ見て、にやついていたんですか?」
訊かないでいると、なにかもやもやして来そうだったので、即行、訊いてみる。
「いや……」
と陽太が言い淀んだので、怪しんだのだが。
陽太は、
「実は、お前の送ったスタンプが可愛かったから眺めてたんだ」
と可愛らしいことを言い出した。



