好きになるには理由があります

 人事部長はどうやら、玉の輿狙いの深月が陽太を籠絡し、陽太に頼まれた会長が深月を秘書に抜擢したと思っているらしい。

 此処は俺がビシッと言うべきだな、と陽太は思う。

 深月の方を見ている人事部長たちに言った。

「いろいろ憶測が乱れ飛んでいるようですが。
 私は公私混同して、彼女を秘書に選んだわけではありません」

 そのあと、深月の能力の高さについて語ろうと思ったが、残念ながら思いつかなかった。

 そこで、
「貴方がたは、私が彼女を膝に乗せて――」
と陽太は深月の手を引く。

「こんな風にして仕事をするとでも……」
とみんなの前で深月を膝に座らせたが。

 ふと見ると、深月は真っ赤になって俯いている。

 自分も膝に乗った深月の柔らかな感触になんだか、どぎまぎしてしまった。

 沈黙したまま、二人で俯く。

「……お、降りろ、一宮」
と慌てて手を離すと、はいっ、と言った深月は、ぎくしゃくした妙な動きのまま、隅の方へと逃げ去った。

「とっ、ともかく、公私混同はしていませんから」
と陽太は訴える。