好きになるには理由があります





 朝、陽太が仕事をしていると、支社長室に深月がやってきた。

 もう此処へ来る言い訳になにかを持ってこなくてもいいので、手ぶらだ。

 その深月が、
「なんか杵崎さんが睨むんですけど」
と言ってくる。

 お前に気があるんじゃないのか?
と陽太は思っていたが、書類を見ながら、ふーん、と流す。

 杵崎は興味のない相手なら、睨みもしない。

 だが、深月にそのことを教えるつもりはなかった。

 変に意識されても困るからだ。

「では、来週からお世話になります」
と深々と頭を下げてくる深月に、

「別に今週から入っても構わんぞ」
と言ってみたが、

「いえ、引き継ぎしないとですし。
 いきなりの抜擢で、風当たりも強そうですしね」
と言う。

「別に秘書なんて大抜擢とかいう代物でもないだろ」

「それは支社長が貴方でない場合ですよ」
と言いかけ、深月は言葉をにごした。

 玉の輿狙いの女どもに嫌がらせでもされているのだろうかな。