好きになるには理由があります

 そういえば、中学のときも、高校のときも、よく、
「一宮くんの従妹なんだって?」
とか、

「一宮先輩の妹なんですか?」
と女の子たちに声をかけられていたっけな、と思う。

 深月は濃すぎて熱すぎる珈琲を手にしたまま、陽太の方を眺めた。

 陽太は休憩時間だというのに、おじさんたちに聞きながら、振りの確認をしている。

 あれだけ嫌がってたのに。
 やり始めたら本気だな……。

 陽太の役はいわゆる悪役だ。

 かなり動き回るので、体力がいる。

 勢いを落とすと、話が盛り上がらないので、どんなに疲れていても、大きく動き続けないといけない。

 確かにおじさんたちにはきついよな、と深月は思う。

 陽太に振りをやって見せていた細身の喜一もきつそうだった。

 だが、陽太は身体も大きいし、体力もあるので、四股を踏む感じに大きく足を広げて、どん、どん、と足踏みすると、舞台が揺れるくらいの振動を感じる。

 ナイスキャストだったな、と思ったとき、おじさんたちが陽太に会場に下りて、子どもたちにちょっかいかけるシーンをやってみろ、と言い出した。

 陽太は言われるがまま、何処かの孫を脅してみていた。

 ……やめてください。
 本気で泣いています。

 迫力ありすぎだ、と思ったとき、後ろで声がした。

 陽太とは違う、男なのに、何処か透明感のある声だ。