好きになるには理由があります

「……おい、陽太っ。
 陽太おじさんっ」

「おじさん、お前だろっ」
とかつておじの立場を争っていたときとは逆の立場でもめ始める。

 なんだかんだで仲良いな、と深月は笑った。

 グラスを口許に運ぶと、鼻にひっつきそうなくらい詰め込まれているミントのいい香りがした。

 いい風だし、いい眺めだ、と深月は微かに夕日の残る島影を見る。

「漁船から見るのとでは、景色が違いますね~」
と深月が言うと、

「高さが違うからかな」
と陽太は言う。

「ツマミ作るぞ」
と軽く済ますと言っていたのに、杵崎は追加の料理を作ろうとする。

「……お前、ベロベロになるなよ」
と陽太は言ったが、ベロベロの状態で練習に参加してるおじさんが居るのも確かだった。

 漁師さんたちは、朝、漁を終えたあと、みんなで呑んだりしているからだ。

 だが、舞い出すと、すっと酔いが覚めたように別人になる。

 奥さんたちもあの顔を見たら、惚れ直すに違いないと思っていた。