好きになるには理由があります

 


「少しなら、呑んでも大丈夫だろ。
 おじさんたち、いつも一杯ひっかけてくるし」

 そう言いながら、陽太は深月にミントがたっぷり入ったモヒートのグラスを渡してくる。

「偏見かもですが、船旅にはモヒートが似合いますよね」
とそれを受け取りながら、深月は笑った。

 なにかこう、爽やかな感じがするからか。

 それとも、モヒート自体が、海賊たちが壊血病などの薬代わりに呑んでいたと聞いたせいか。

 杵崎が陽太に、
「陽太、お前、操縦したいんだろ。
 俺も呑んでいいか」
と訊いていた。

 あ、普段は、陽太って呼ぶんだ? と深月は新鮮に思う。

 だが、陽太はなにか連絡が入ったのか、スマホをいじっていて聞いていなかった。