好きになるには理由があります

 夕食は船のキッチンで、陽太と杵崎がささっと作ってくれた。

「軽いものでいいだろ」
と言いながら、練習前なので、ニンニクを入れていないパスタやミネストローネを用意してくれる。

 役立たずの深月がぼんやり眺めていると、
「テーブルを拭け」
と哀れに思ってか、陽太が仕事を言いつけてくれた。

「はいっ」
と勢いよく返事をした深月は、デッキに猛ダッシュして、これ以上ないくらい丁寧にテーブルを磨き上げた。

 料理の方はまったく出る幕なさそうだったので、せめてっ、と思ったのだ。

 もうすぐ春か、と思いながら、島の向こうに沈みかけている太陽を眺めていると、

「深月っ、運べっ」
と中から陽太の声がした。

「はいっ」
と深月はまたダッシュする。