好きになるには理由があります

 


 そんなに仕事ができるとも思えない私がこの大抜擢。

 支社長狙いの女子社員に嫌がらせを受ける日も近い。

 などと考えながら深月が支社長室を出ると、杵崎が待っていた。

 無表情に、
「おめでとう」
と手を叩いてくる。

「ついに秘書におさまりやがって」

 いや、おさまりたくはなかったのですが……。

「神楽の練習もできないくらいいじめ抜いて――

 鍛え抜いてやるからな」

 本音がダダ漏れですよ……。

 っていうか、私は実質、この人の下で働くと言うことでは?

 支社長狙いの女子社員になにかされる以前に、杵崎さんにやられそうだ、と思う。

 なんか杵崎さんがシンデレラの継母に見えてきたな。

 と何故、母だ、と言われそうなことを思っていた深月は気がついた。

 小声で叫ぶ。

「杵崎さんっ」