好きになるには理由があります

  


「お前、秘書室に異動になるぞ」

 ある日、支社長室で陽太が言ってきた。

「……なに他人事みたいに言ってるんですか」
と深月は言ったが、

「俺の指示じゃない」
と陽太は言う。

「お前、この間、じいさんを案内したろ」

「え?
 ああ、小学生と一緒にご案内した?

 子どもたちとは、レクリエーション室でお別れしたんですけど。

 私もおじいちゃんも飴とかいただいちゃって、ほっこりでした」

「……あれは、うちのじいさんだ」

「えっ、会長?」

「お前の案内、たいそう子どもにもわかりやすくてよかったと褒めてたぞ」

「まさかそれで秘書に?」

 いや、違う、と陽太は言った。