「その男はお前に気がある」
会社が地域に貢献していると褒められたことと。
今度、神楽の練習を覗きに来るとその先生が言ってくれたことを深月が告げると、陽太はそんなことを言い出した。
「なんでですか」
と深月は訊く。
支社長室には、結局、椅子なしで入った。
杵崎が連れてきてくれたのだ。
デスクに着いたままの陽太は仕事で失敗した人間を叱責するように言ってきた。
「工場はともかく、神楽が好きとかいう若い男がそうそう居るわけないだろうが。
お前目当てに覗きに来たいだけに決まってるっ」
という偏見を披露してくれただけだが……。
「いやいやいや。
神楽好きの若い人は一定数居ますよ。
私、実は杵崎さんもじゃないかと思ってるんですけどね。
忙しい支社長の代わりにやろうとか言ってましたけど。
杵崎さん、もともと巫女さん好きですし。
その手のものが好きなんじゃないですかね~?」
と言ってみたのたが、陽太は、
「だから、それこそ……っ」
と言いかけ、何故かやめた。



