好きになるには理由があります

 目の前にあったそれを思わず掴んだ深月だったが、
「待て」
と杵崎に止められた。

「……お前、もう秘書になれよ」
と反対していたはずの杵崎が言い出す。

 は? と訊き返して、

「支社長に用があるたび、次々いらないものを支社長室に持ち込むな。

 ……しかも段々デカくなってる」
と椅子を見下ろす杵崎に言われてしまった。