好きになるには理由があります

 


「杵崎さん、杵崎さん」

 そのあと、総務に戻った深月は、カウンターの前を通りかかった杵崎を呼び止めた。

 教師に言われた話をし、

「嬉しかったので、支社長にも直接お伝えしたいんですけど。
 今、支社長、お忙しいですよね?」
と訊いてみた。

「今はそうでもないと思うが……」

 支社長室に居るはずだ、と言われ、

「そうですか。
 では」
と行こうとして、迷う。

 なにを持っていこうかと思ったのだ。

 電球もトナーも手提げ金庫ももう持っていってしまったしな、
と思った深月の視界に、それが入った。

 今は使っていない古いパソコンデスク。

 椅子だけが比較的新しい。