「ごめん、ハンカチ持ってないや」
「あっ。私、持ってる」
ポケットから出したが、彼のシャツがベタベタになっているのに気づいて慌てる。
「ごめんなさい」
「なにが?」
「シャツ、濡れちゃった」
焦りながら言ったのに、海里くんはクククと肩を震わせて笑い始める。
どうしたの?
「白石って、謝るの趣味?」
「趣味?」
「悪くないのに、謝んなくていいよ。これだって、俺が離さなかったからだろ?」
『離さなかった』なんて言われて、急に恥ずかしくなってきた。
「あっ、えっと……」
しどろもどろになり視線をキョロキョロさせていると、一層大きな声で笑われた。
それから彼が私の手からハンカチをスルッと奪い、ごしごしと私の顔を拭くので目が点になる。
ちょっと雑じゃない?
体をのけぞらせると、〝しまった〟というような表情をしている。
「やっちゃった。汗拭く勢いだな、これじゃ。悪い」



