そして、べっとりと手にまとわりついた兄の温かな血の感覚も。
残酷な現実を受け止めきれなかった私は、それきり気を失ってしまった。
そして目覚めたのは病院のベッドの上。
付き添っていた父の目は真っ赤に腫れあがり、私が目を覚ますやいなや「よかった」と号泣した。
こんなに泣いている父の姿を見たのは、あとにも先にもこの時だけだ。
しかし、ちっともよくなんてなかった。
兄は助からなかったからだ。
どうして私なんてかばったんだろう。
私は運動ができるわけでも、成績がいいわけでもない。
ごくごく平凡な中学生。
どうせ生き残るなら、将来を期待された兄のほうがよかった。
父から兄の死を告げられたとき、そんなことばかりが頭を駆け巡り、すぐに泣くことすらできなかった。
私が死ぬべきだったんじゃないの?
どうして才能もなく役に立たないほうが生き残ってしまうの?
どうして……。



