それに……兄の話をされるのがつらいことを理解してくれた海里くんの存在がとてもうれしい。
彼が言った通り、安藤さんの口調はとても軽いものだった。
『残念だった』なんて言いながら、彼女は彼女の思い出を話していただけで、兄の死を悼んでいるようには感じられなかった。
だから余計に感情が爆発しそうになって、つらかった。
なにも言わずにそのままついていくと、彼は屋上に続く階段へと足を進める。
意外にもカギが開いていて、私たちはすんなり屋上に上がることができた。
――ギギギーッ。
さびついた鉄の扉が開くと、温かな春の日差しが私たちを迎える。
海里くんはそこでようやく私の手を離した。
彼はそのまま周囲に張り巡らされたフェンスの方に歩いていき振り向くと、口を開く。
「驚かせてごめん」
「えっ? ううん」
謝られるようなことはなにもされてない。
むしろ助けられた。



