「淳史さーん!古典教えて?」

「お前、少しは遠慮しろよ?俺は今帰って来たばかりなんだぞ?」

「うん、知ってる。待ってたから」

「……ばーか。お子様が何時までも起きてんじゃねぇよ」


どこまでも純粋で、憎らしいくらい天真爛漫なこの小悪魔は、時折ツンツンするけれど、デレ期の多い愛されキャラで、何時だってこの家の中を明るくしてしまう。


そんな彼女に気持ちを持って行かれたのは、きっとあの瞬間だ。


「ねーぇ?淳史さーん?」

「なんだ?まだ分かんねぇとこあんの?」

「んーん。違う」

「じゃあ、なんだよ?」

「淳史さんは、なんでそんなに優しいの?」

「…はぁ?」


椅子に体育座りをして、チラリとこちらを見やる彼女の頬は赤い。
そこに、なんとなく…本当になんとなく、「女」の部分を感じてしまい…。
危うく昔のように、キスの一つでもしてしまいそうになるのを必死で留めた。

「んなつまんねぇこと言ってねぇで、その公式さっさと解けよ。二度は教えねぇからな」


何考えてんだ、俺。
相手は高校生、俺と10個も離れてんだぞ?
手ぇ出したら、法律違反だ。
とりあえず、まだ…俺は国に反することなんてしたくない。


そう、心の中で首を思い切り横に振って誤魔化し、悪態を吐いた。