霧河は慌ててその娘の口を自分の手で抑える。

「シ~ッ!!」と言って、その娘を静かにさせた。

「は~。危なかった。もうちょっとで君のお父さんやお母さんまで起きてしまうところだった」





女の子は一旦トイレに行って、戻ってきてから2人で話をした。

「さっきはごめんなさい・・・」

「ごめんなさい・・・か。変な感じだな。

本来なら、それはこっちが言うべき事なのに」

「お兄さんは、一体誰?」

「う~ん・・・そうだな~」

霧河はスパイのように、子供達にクリスマスプレゼントを配っている事から、

とっさの思いつきで、

「俺は〝サンタクロースパイ〟だ」と言った。





女の子はポカンとして、

「ロース・・・?パイ・・・?ロースパイ・・・?何それ?

美味しいの?」と言って、

霧河はズッコケた。

「あのね~!俺は食べ物じゃないよ!!」と言った。





今の女の子の一言で、今度は霧河が思わず大声を出してしまった。

今度は女の子が「シ~ッ!!」と言う。それに対し、

霧河は、小声で「すっ、すみませんっ!!」と言った。





女の子は、霧河に、

「お兄さんは、サンタさんなの?」と聞いた。

そう聞かれ、霧河は、

「まぁ、サンタさんといえばサンタさんかな?」と答えた。

「ふ~ん」

「まぁ、皆が思ってるほど、夢のあるモンじゃないし、

そんな良いモンじゃないけどね(笑)。空飛ぶソリも持ってないし、そもそもトナカイ飼ってないし、家に入るのだって、

この金属の棒を使ってカギを開けてるし」