『ねぇ、美夕ちゃんはさ、プレゼント…あげないの?』
永瀬は、あたしが寛人を好きなのを唯一知っている貴重な存在だったりする。
実は。
今日は、寛人の誕生日で…。
奇しくもバレンタイン。
お菓子屋の陰謀だとしても、一応バレンタインデーという女の子にとってある意味聖なる日。
だから、それを考えての意見だったんだろうけど…あたしは…。
『うーん…永瀬は欲しい?』
なんて、間抜けなことを聞いてしまった。
驚いて、あの三白眼の永瀬が思い切り開眼してしまうくらいだから…よっぽど拍子抜けしたんだろうと思う。
『美夕ちゃんからのチョコなら勿論欲しいけど。…そうじゃなくってさ。…ほら…』
『あぁ……あっちね……あはははは…』
『…なんか、聞いた僕が馬鹿だったみたいだね…』
にへらっと笑って言葉を濁すあたしに、呆れて溜息まで吐き出す永瀬。
その様子を見て、慌ててごめんごめんと笑った。
永瀬はあたしのそんな行動に、少しだけ眉を潜めて改めて助言をしてくれた。
『いいけど…。ねぇ、あげないとが辛くなるだけなんじゃないの?』
『…う、ん…ありがと…分かってる、から』
『そう…じゃあ、僕はもう何も言わないよ』
そんな会話を続けた後…。
あたし達は、その後チョコの話を一回も出さずに互いの家へと別れた。



