ジタバタと暴れるあたしを楽しそうに見ているだけの寛人。
こんな風に、情熱的な部分を持っているなんて、今まで知る由もなかったから。
展開の方向性が読めずに、あたしは自ら自分の付けていた仮面を剥ぎ取って降参をしたのに。
それでも、寛人は腕を緩めるどころか、益々逃げられないように距離を詰めてしまう。
「ねぇ…頂戴?」
「ヤっ…………な、に……?」
「…くれないの?…チョコ。…後、出来たら…永井付きでもらえると…有り難いんだけど」
「……っ」
抱き締める腕は、相変わらず強いのに。
心を見透かすようにして囁かれる言葉は、まるで媚薬のようにあたしの思考を鈍らせる。



