【短】Love Maneuvering


会話の途中から、寛人の表情が段々と変わってきたのは感じていたけれど。

帰りって言葉を出した途端に、不意をついてふわっと微笑む寛人に、あたしは驚いて。
思わず何も言葉を返さずに、息を飲んで黙りこくってしまう。



だって、反則、だと思う。
そういう顔は、今のあたしには拷問にも近いのに…。



もしかしたら、知らず知らずのうちに得意のデータ収集で。
あたしの気持ちを汲み取ってしまったのかと疑わずにはいられないほど…。


寛人の今の顔は、ダイレクトにあたしの心臓を鷲掴みにしてしまったから。


自惚れでもいいから。
勘違いだと流されてもいい、から…。



貴方を抱き締めたい、なんて。



そんなことを望んでしまう。


高鳴る鼓動。
震える手。


悔しいけれど、貴方が好きです。