「え…?なに……ノート?」
あたしも黒板の方を向いている教師をチラチラと気にしながらジェスチャーを繰り返す。
どうやら、ノートが関係あるようで、寛人はそれだけあたしに伝わったのを知ると、納得したように頷いてまた前を向いてしまった。
寛人とは、このクラスの男子の中で一番仲がいい。
休み時間も昼休みも、気付けばよくしゃべっているし。
偶に一緒にお弁当を食べたり、委員会があった後なんかは部活を終えた寛人と二人で帰ったりもするくらいで。
そういうことをすぐにからかいたがる男子には、「付き合ってんだろう?」なんて言われたけれど。
寛人がやんわりと、「そういうことばっかり言ってると、永井に失礼だろ?」なんて同級生らしからぬ態度でかわすから…。
何時の間にか、そんなことも言われなくなってしまうくらい、あたしと寛人が一緒にいることは自然なことになっていた。
そういう優しい所が、大好きで…。
だけど、その優しさが時には残酷過ぎて、嫌になる。



