【短】言葉にならない



「誓うよ…佳菜子さん。…貴女にだけ…」

「…あたしに?」

「そう。他の誰でもない、貴女にだけ。この誓約は、二人だけのものだから…」



空が赤く染まっても。


水が黒く染まっても。


光が生命を導くモノじゃなくなったとしても。


闇が安ぎを生むモノじゃなくなったとしても…。




声にならないほどの想いを抱えて。
流すことを許されない涙を幾つも胸に滴らせながら。



「この世の中に二人だけでいい、なんて望まない…でも…」

「二人の希望が、全てに繋がっていけばいい…ね…」



握り締めた手。
伝染し合った温度と温度。
たとえ、明日…二人が離れてしまうとしても。


この、瞬間の全てを忘れずにいたいと祈るから。



「……愛してる…」