「この世にはまだまだ知らないことがたくさんある。俺はそれを見てみたい」
世界のことを語るときのエリッヒの目は急に輝きを増す。
エミリアはその輝きを見ると顔が熱くなるのを感じていた。
そんな自分の感情を意識してしまうと、ますます胸の鼓動が激しくなる。
会いたくて眠れなかったことを伝えたい。
しかし、それを伝えて良いものなのかが分からない。
身寄りのない異国の地にいる今の自分にとって、唯一頼りになる存在を失うことの方がこわい。
今こうしてそばにいてくれること。
それをただ受け止めるだけで満足すべきなのではないだろうか。
どうしてもそれ以上踏み込むことのできないもどかしさを打ち消すように、エミリアはコーヒーを一息に飲み干した。
「気に入ってもらえてうれしいよ」
エリッヒがエミリアに笑みを浮かべながらパンを一つ取った。
エミリアのカップが下げられて、入れ替わりに執事がオレンジジュースを置いた。
カップを下げる給仕長を目で追っていると、エリッヒがささやいた。
「一杯でやめておいた方がいいよ」
「どうしてですの?」
「一度に飲み過ぎると人によっては眠れなくなったり、動悸が激しくなる人もいるみたいだから。一杯だけなら、心配ないけどね」
「異国のものは慣れるのが大変ですのね」
エリッヒはうなずきながらパンをちぎってチーズをのせた。
白カビのついた塊を切ると、中はとろりとクリーム状になっている。
ナポレモでは見たことのないチーズだった。
「わたくしにもそれをいただけるかしら」
給仕長がすぐにチーズの皿を差し出す。
一切れもらってパンにのせて口に入れると、程良い酸味の後に甘みが舌にからみつき、芳醇な香りが口の中に広がっていった。
想像を超える味に言葉が出ない。
華の都フラウムには他にも知らない食べ物がたくさんあるのだろうか。
自然と顔がほころんでしまう。
そんなエミリアの様子を眺めながらエリッヒも朝食を楽しんでいた。
世界のことを語るときのエリッヒの目は急に輝きを増す。
エミリアはその輝きを見ると顔が熱くなるのを感じていた。
そんな自分の感情を意識してしまうと、ますます胸の鼓動が激しくなる。
会いたくて眠れなかったことを伝えたい。
しかし、それを伝えて良いものなのかが分からない。
身寄りのない異国の地にいる今の自分にとって、唯一頼りになる存在を失うことの方がこわい。
今こうしてそばにいてくれること。
それをただ受け止めるだけで満足すべきなのではないだろうか。
どうしてもそれ以上踏み込むことのできないもどかしさを打ち消すように、エミリアはコーヒーを一息に飲み干した。
「気に入ってもらえてうれしいよ」
エリッヒがエミリアに笑みを浮かべながらパンを一つ取った。
エミリアのカップが下げられて、入れ替わりに執事がオレンジジュースを置いた。
カップを下げる給仕長を目で追っていると、エリッヒがささやいた。
「一杯でやめておいた方がいいよ」
「どうしてですの?」
「一度に飲み過ぎると人によっては眠れなくなったり、動悸が激しくなる人もいるみたいだから。一杯だけなら、心配ないけどね」
「異国のものは慣れるのが大変ですのね」
エリッヒはうなずきながらパンをちぎってチーズをのせた。
白カビのついた塊を切ると、中はとろりとクリーム状になっている。
ナポレモでは見たことのないチーズだった。
「わたくしにもそれをいただけるかしら」
給仕長がすぐにチーズの皿を差し出す。
一切れもらってパンにのせて口に入れると、程良い酸味の後に甘みが舌にからみつき、芳醇な香りが口の中に広がっていった。
想像を超える味に言葉が出ない。
華の都フラウムには他にも知らない食べ物がたくさんあるのだろうか。
自然と顔がほころんでしまう。
そんなエミリアの様子を眺めながらエリッヒも朝食を楽しんでいた。


