横から中年女が口を挟む。

「あんた、なかなかの男前だね。でも、明日の婿選びに加われないのは残念だね」

「ほう、婿選びも兼ねているのか」

「そうなのよ。なにしろ、疫病でお世継ぎだった王子様達がお亡くなりになっちまったでしょう。王様もお困りでございましょうよ。それでね、明日は貴族のおぼっちゃんたちが王女様とお見合いをなさるんだそうよ」

「貴族様か。俺はそんな堅苦しいのは御免だな」

 男は人込みを抜け出して来た道を戻りはじめた。

 見張り塔の番兵が吹き鳴らす角笛が日没の閉門を告げる。

 跳ね橋を引き上げる鎖と歯車の音が響く。

 城下の街は夜になっても明日のお祭りへの期待で活気に満ちあふれていた。