正面扉が開かれ、城下の街に出た。

 高貴な服装の王女とちぐはぐな荷馬車を見て、市民達が笑い出す。

「おい、見ろよ」

「なんでえ、ありゃ」

「あんなのが王女様とはな。罪人と変わらないぞ」

「ああ、これで王国も終わりか」

 市民達にじろじろと見られ、嘲笑される。

 向こうは自分を知っているが、こちらは誰のことも知らない。

 それでも人々は自分のことを指さして笑う。

 風が吹き抜けてドレスの裾がまくれ上がる。

 エミリアの白い脚がむき出しになった。

 赤面しながら押さえるエミリアに対し、見物の男達から下卑た口笛が浴びせられた。

 エリッヒまでがニヤけている。

「おい、そんなところを気にするより、ちゃんとつかまってろ」

「余計なお世話ですわ」

「そんなもの、見せたところで減るもんでもないだろう」

 見せても減らないのなら馬上から男の背中を蹴飛ばしてやろうかと思ったが、届きそうもないのであきらめた。

 荷馬車を引く馬の歩みは遅い。

 自分で歩いた方が速いのではないだろうか。

 見せ物にするためにエリッヒがわざとそうさせているのではないかと思えるほどだった。

「ちょっと、ずいぶんのんびりですのね」

「荷車を引いているんだ。馬に無理はさせられん。それに、これ以上速くするとあんただって落ちるだろ」

 反論できずに、エミリアは背筋を伸ばして前方を見つめた。

 外城郭の門を出て跳ね橋を渡る。

 いよいよ生まれて初めて見る外の世界だ。