しかし、一人手を挙げる者がいた。

「あいや、待たれい」

 みなの視線が向く。

 ナヴェル伯父であった。

「なにか」

「王家存亡の危機とあれば我らがアルフォンテ十二騎諸侯の合議により摂政を定めるのが筋ではござらんか」

 正論ではあるが、マウリス伯は動じる様子はなかった。

「御曹司達は年少者も多く、この難局を任せられる者はおりますまい」

「しかし、しきたりを破ることは……」

 ナヴェル伯父の言葉をマウリス伯がさえぎる。

「いまさら反論は受け付けぬと先ほど申し上げた通りですぞ。これ以上混乱を引き伸ばすようであれば、たとえ名誉あるアルフォンテ十二騎の諸侯であっても、容赦はできませぬぞ」

 ナヴェル伯父は天を仰いでうなると、大広間を出て行ってしまった。

「王女様をお守りするのだ」

 マウリス伯の指示でエミリアは衛兵達に取り囲まれて、父王の遺体から引き離された。

「シュライファー、わたくしと一緒に来なさい」

「はい、王女様」

 マウリス伯が割って入った。

「待て、シュライファーは国王陛下のご遺体を礼拝堂にお運び申し上げるのだ」

「かしこまりました」

 エミリアは一人で自室に連れていかれ、そのまま部屋を出ることも許されなかった。