ためらえば二人ともかみ殺されてしまう。
「私はおまえを殴りたくはありません」
うなる犬に向かって鍬を振り下ろし、大声で威嚇する。
「去らねばやりますよ! 向こうへ行きなさい!」
エミリアは本気で犬に殴りかかっていた。
昔の自分なら考えられなかったことだ。
殺気が伝わったのか、甲高い鳴き声を上げながら野良犬が逃げていく。
「大丈夫ですか!」
犬の鳴き声を聞きつけて護衛のキューリフが駆けつけてくれた。
「ええ、なんとか追い払いました」
すぐにエミリアは手にした鍬で穴を掘り始めた。
「わたくしが代わりにいたしましょう」
キューリフが申し出てくれるがエミリアは手を止めなかった。
「ではあなたも穴を掘ってください。できる限り埋葬しましょう」
「わ、わたくしもお手伝いいたします」
マーシャも立ち上がる。
「では、何か道具を探してきてください」
二人が穴掘り道具を探しに行っている間もエミリアは汗まみれになってできる限り穴を深く掘っていった。
穴が浅いとさっきのように野良犬が匂いをかぎつけて掘り返してしまうだろう。
しかし穴掘りは単純な作業のようで、意外と難しい。
思ったように深く掘れず、手が痛くなる。
しだいに皮もむけてきてしまった。
胸の『死神の手形』を隠すために巻いていたスカーフを外して手に巻きつける。
ひりひりとした痛みに耐えながらエミリアは必死に穴を掘り続けた。
道具を見つけてきた二人も戻ってきて、それぞれ穴を掘り始める。
キューリフに鍬の使い方を学びながらマーシャも一生懸命頑張っている。
ようやく一人分の穴を掘り終わった頃にはだいぶ日が傾いてしまっていた。
街角で亡くなっていた少年の遺体を運んできて埋葬し、目印となる小さな石を置いた。
三人で祈りを唱え、もう二つの穴に教会内で亡くなっていた黒衣の聖職者たちを埋葬した。
半日でできたことはそれだけだった。
「これではきりがありませんね」
キューリフのため息にエミリアも同意せざるを得なかった。
大勢の埋葬どころか、一人一つずつ穴を掘るのが精一杯だった。
どんなに頑張ってもこれが限界だったし、手も体も痛くては、この先も続けていくのも難しい。
「どうしたものでしょうか」
ため息ばかりで解決方法はまったく思い浮かんでこなかった。
教会のまわりには浮浪者がたむろし、街のどこからか悲鳴のような声も聞こえてくる。
治安が悪化していて、つい数ヶ月前の街の華やかさはどこかに消え去っていた。
暗くなる前に宮殿に帰らなければ危険だろう。
現実に打ちのめされて答えのでないまま三人は西門まで戻ってきた。
「私はおまえを殴りたくはありません」
うなる犬に向かって鍬を振り下ろし、大声で威嚇する。
「去らねばやりますよ! 向こうへ行きなさい!」
エミリアは本気で犬に殴りかかっていた。
昔の自分なら考えられなかったことだ。
殺気が伝わったのか、甲高い鳴き声を上げながら野良犬が逃げていく。
「大丈夫ですか!」
犬の鳴き声を聞きつけて護衛のキューリフが駆けつけてくれた。
「ええ、なんとか追い払いました」
すぐにエミリアは手にした鍬で穴を掘り始めた。
「わたくしが代わりにいたしましょう」
キューリフが申し出てくれるがエミリアは手を止めなかった。
「ではあなたも穴を掘ってください。できる限り埋葬しましょう」
「わ、わたくしもお手伝いいたします」
マーシャも立ち上がる。
「では、何か道具を探してきてください」
二人が穴掘り道具を探しに行っている間もエミリアは汗まみれになってできる限り穴を深く掘っていった。
穴が浅いとさっきのように野良犬が匂いをかぎつけて掘り返してしまうだろう。
しかし穴掘りは単純な作業のようで、意外と難しい。
思ったように深く掘れず、手が痛くなる。
しだいに皮もむけてきてしまった。
胸の『死神の手形』を隠すために巻いていたスカーフを外して手に巻きつける。
ひりひりとした痛みに耐えながらエミリアは必死に穴を掘り続けた。
道具を見つけてきた二人も戻ってきて、それぞれ穴を掘り始める。
キューリフに鍬の使い方を学びながらマーシャも一生懸命頑張っている。
ようやく一人分の穴を掘り終わった頃にはだいぶ日が傾いてしまっていた。
街角で亡くなっていた少年の遺体を運んできて埋葬し、目印となる小さな石を置いた。
三人で祈りを唱え、もう二つの穴に教会内で亡くなっていた黒衣の聖職者たちを埋葬した。
半日でできたことはそれだけだった。
「これではきりがありませんね」
キューリフのため息にエミリアも同意せざるを得なかった。
大勢の埋葬どころか、一人一つずつ穴を掘るのが精一杯だった。
どんなに頑張ってもこれが限界だったし、手も体も痛くては、この先も続けていくのも難しい。
「どうしたものでしょうか」
ため息ばかりで解決方法はまったく思い浮かんでこなかった。
教会のまわりには浮浪者がたむろし、街のどこからか悲鳴のような声も聞こえてくる。
治安が悪化していて、つい数ヶ月前の街の華やかさはどこかに消え去っていた。
暗くなる前に宮殿に帰らなければ危険だろう。
現実に打ちのめされて答えのでないまま三人は西門まで戻ってきた。


