【短】私が「好き」だと言っても貴方はただ、曖昧に笑うだけなのでしょう?

ふと、あの頃のことを思い出す。

もしかしたら、最初から私の方が目で彼を追っていたのかもしれないと。

そう思い当って、切なさが溢れ返った。

「志乃…?何考えてるんだ?二人でいる時くらい他の事なんか考えるなよ……」

そう甘えた声で言って、私に覆い被さる彼を受け止めながら、私は冷静な思考を持ちつつその先の行為に身を預けた。

他の事なんてない。

何時も貴方の事だけ考えてるわ、だなんて。

言ってしまえば、この関係は容易く終わりを告げるだろう。

それが分かっているから、私はゆっくりと瞳を閉じた。