紀野くんが、中学時代にいじめられてたのは覚えてるけど。


「お金もおふくろも友達も、なにもかも失った俺に、ひとつの光が見えたんだ。


愛海ちゃんという存在は、俺を照らしてくれると思ったんだ」


「だから、この女をストーキングしたのか……」


翔さんが、妙に興奮した様子の紀野くんを細目で睨みつける。


だが、紀野くんには効き目がないようで。


「ストーキングして、なにが悪いんだよ。


愛海ちゃんが好きなんだよ。


好きなら、なにしたっていいだろ?」


紀野くんは、私に恐怖を与えたという自覚を持っていなかった。


自分のしたことに悪いことはないと思っているようだ。


そんな……紀野くん……。


こんなの、私の知ってる紀野くんじゃないよ。