実際は言ってないけど。


私の肩に置いていた手を強引に離されたことで、悟さんの表情が険しくなる。


悟さんも目つきが怖い。


「翔は家で留守番でもしとけよ。


俺が愛海ちゃんの彼氏役になるから」


「いや、俺が適任だ。


兄貴より俺といたほうが、こいつだって落ち着くだろうし」


うわぁ……。


我妻家の長男と次男、火花を散らしてる……!


ハラハラドキドキする。


だが、その時間は短かった。


悟さんが「じゃんけんで決めるか」と言って、翔さんも賛成する。


その結果、勝ったのは翔さんだった。


「よし!」


翔さんが心の底から嬉しそうな笑みを浮かべ、悟さんが下唇を噛んで、悔しそうな顔をする。


悔しそうな悟さんを尻目に、翔さんが私の腕を引っ張って、外へ出る。


私も、翔さんにつられて、外に出た。