えっ、そ、そっち?


悟さん……『大丈夫だよ』って、そういうことだったの?


予想していなかった答えに呆然とする。


呆然とする私に気づいていないのか、悟さんが私の肩に手を置いたままこう言う。


「俺、愛海ちゃんの彼氏役になるよ。


父さんの仕事の手伝いは、たまにやるだけでいいって言われてるし」


「えっ……」


悟さんが、私の彼氏役……?


役をすすんでやってくれるの?


パチパチと、必要以上のまばたきをしてしまう。


しかし、私と悟さんの会話を聞いていた翔さんが私の手首を引っ張って、悟さんから引き離した。


「兄貴は親父の仕事をやれよ。


俺がこの女の彼氏役になる」


翔さん、目つきが怖い。


悟さんを見つめる翔さんの目は、天敵を威嚇する肉食獣のようだ。


まるで『こいつは俺のものだぞ!』と言ってるみたい。