BLACK TRAP ~あの月に誓った日~


背が高く、冷たさを感じるほど整った顔立ちの佐々木海里。

憧れの人を目の当たりにしても、以前ほどの喜びはなく。

私が助けを待っていたのは、藤川なのだと思い知らされる。


好きにはならないと誓ったはずなのに。

藤川の姿を見ただけで安堵している自分に気がついた。


「また捕まったのか、七瀬」


呆れ混じりの優しい声で名前を呼ばれた。
それだけで、嬉しいなんて……。


「私の代わりに捕まったんだよ。皇世お願い、七瀬のこと助けて!」


美愛が小野寺理希の隣で懇願する。


もう変装の必要はなくなったと判断したのか、藤川は眼鏡を外し胸ポケットにしまい込んだ。


「お前、伯王の……!」


藤川の素顔に気づいた男は目を剥き、私の腕を掴んでいた力を緩めた。


「何で桜花と伯王が繋がってんだ!? 敵対してるはずだよな」


信じられない、といった表情で男が一歩後ずさる。

それに対し、藤川は一歩ずつゆっくりと踏み出していく。


「わ、悪かった。上からの命令だから仕方なかったんだよ……」

「上って? 名前、教えてくれないかな」