BLACK TRAP ~あの月に誓った日~


泣き出しそうな顔をした美愛は、大柄な男に両の手首を拘束され、捕らわれていた。


「そこの女と引き換えなら、考えてやるよ」


男が顎で示しているのは、どうやら私のよう。

──また交換条件、か。


「本当に美愛を返してくれるの?」


ほとんど力の入っていない椎名深影の手から抜けた私は、慎重に男へ近づきながら訊く。


「七瀬、来ちゃダメ」


慌てた美愛が首を振る。

私なら慣れているから大丈夫。
美愛が捕らわれるより、全然いい。


目配せをすると美愛は唇を噛みしめた。


私が男の目の前に立った瞬間、美愛は小野寺理希の方へ突き飛ばされる。


「っ、ミアちゃん!」

「り……、理希くん……」


抱き合う形になった二人を横目に、私は蒼生高と見られる男から力任せに引き寄せられた。

男の厳つい指が私の二の腕に食い込む。


「……伯王の姫ゲット」


男がニヤリと嗤った気配がする。

そのまま、誰かに連絡を始めた。