BLACK TRAP ~あの月に誓った日~


「理希と、姫の関係?」

「姫?」

「あー……、相原のことね」


この人は、女子のことを『姫』と呼ぶのが癖になっているみたいだ。

私のことも、最初『お姫様』と呼んでいた。


「あいつらの関係は、ちょっと複雑なんだよな」


ゆったりと、意味ありげな口調で椎名深影は説明する。


「複雑って?」


勿体ぶらないで、早く教えてほしい。

美愛が傷つくのは見たくないけど、うやむやのままでいるのは美愛のためにもよくない。


「ただで教えると思う?」

「……交換条件、ですか?」


この人も藤川と同じ思考らしい。

薄く笑って私のことを見下ろしてくる。



「相原さんって、佐々木海里と付き合ってるのかと思ってました」

「けっこう詳しいね。アンタ、海里のファンとか?」

「…………別に、そういうわけじゃ」


図星を突かれ、つい返答が遅れてしまう。

動揺する私の内心を見透かしたのか、椎名深影が小さく笑った。