「どこって……、友達を見失ったから捜しに行かないと。……離してくれませんか?」
「なら、俺も手伝う」
「──は?」
「何か放っておけないんだよ。アンタのこと」
「…………」
「わりと、好みなのかもしれないな」
さらりと恥ずかしげもなく口説いてくる男……。
改めて近くで見てみると、ひどく冷たい顔立ちをしていた。
鋭角な顎のラインや鈍色のピアスが、彼の纏う気だるげな雰囲気を引き立てている。
「ちょっと、椎名君。他校の女の子をナンパしてる場合?」
いつの間にか廊下へ移動していた相原さんが、可憐な顔立ちを若干険しくさせて、彼へ文句を言いに来た。
「いや、ごめん。無意識」
「無意識に口説いてたのー? タチ悪……」
呆れた表情すら可愛くて。
さっき小野寺理希が彼女の髪を撫でていた理由が、わかる気がするほど。
なるべくなら、恋敵にしたくないタイプだ。
「とりあえず捜すか。アンタの友達」
私の手首を握り直した椎名深影は、こちらの反応など気にせず、人混みをかき分け進み始めた。



