BLACK TRAP ~あの月に誓った日~


「椎名?」


小野寺理希とその隣にいる女の子が同時に振り返る。


「海里のところに、伯王が向かっているのを見た」


椎名深影(みかげ)は、私たち伯王高校の人間がそばにいることに気づかず、淡々と友人へ報告している。


もしかして、彼らが話しているのは藤川と咲都のこと?

藤川達は、佐々木海里の姿を見かけて話をしに行ったということ……?


「あー、まずいな。喧嘩にならないといいけど」


小野寺理希は光の加減で赤にも見える茶色の髪を、ガシガシと掻いた。


「ゆきなちゃん。悪いけど、ここで待っててくれる? 様子見てくる」

「うん。気をつけてね」


隣にいた彼女に断り、休憩室を早足で出て行く。

残されたその子はふっと溜め息をつき、再び窓際へ体を向けた。



彼女はやはり、相原優希奈だった。

佐々木海里との繋がりはどうなったのだろう……。

私達の知らないうちに、関係性が変わってしまったとしか思えなかった。



「で。アンタはここに何しに来たの。伯王のお姫様」

「……!」