BLACK TRAP ~あの月に誓った日~


「えっ……」


ドアに手を掛けたまま、美愛は絶句する。



二人は窓辺で親しげに寄り添っていた。


美愛の好きな人――小野寺理希が。

女の子の髪を撫でて優しく微笑んでいる。


これはどう見ても、友人以上の特別な関係。



だけど、その女の子は……

よく見ると佐々木海里の彼女に似ていた。



藤川が、相原優希奈(ゆきな)と呼んでいた人。



浮気……?

それともすでに、佐々木海里とは別れていた?



美愛の不安が手に取るようにわかり、私はそっと彼女の肩に触れた。


「やっぱり……見間違いじゃなかったんだ」


フラフラと後ずさり、休憩室から遠ざかる美愛。

小野寺理希が女の子とデートしていたというのが事実だと、目の前で確認できてしまったのだから。そうとうショックを受けているのだと思う。



そのとき。またもや見覚えのある人物が、美愛の開けたドアを通り、室内へ足早に入っていく。


「理希!」


抑えた強めの声で、彼の名を呼ぶ。


「伯王の奴らが来てる」


耳を飾るいくつものピアスが、鈍く光った。