BLACK TRAP ~あの月に誓った日~


レモンイエローの涼しげなトップスと、デニムのショートパンツ。

サイドに寄せたポニーテール。

向日葵のヘアアクセが、元気で明るい美愛の人柄を表していた。



(いいな、私も好きな人しか見えないくらいの恋、してみたい)


そんな思いが浮かぶほど、美愛の姿は眩しかった。



理希(りき)君、私のこと覚えてるかなぁ」


美愛はひっそりと呟き、溜め息をこぼす。


「先月、電車で会ったとき『学校祭に来てよ』って誘ってくれたの、夢だったのかなぁ」

「……え。本人に誘ってもらってたの?美愛」

「うん。社交辞令かもしれないけどね」


自信なさげに美愛は笑う。


「連絡先、聞いておけば良かった」

「それなら、今日もし会えたら聞いてみたら?」

「……だよね。勇気出さないとね」


凛とした目つきに変わった美愛が、休憩室のドアを開けたとき──


奥の窓際に見覚えのある二人の姿が見えて、そのまま私たちは動きを止めた。


「あ。理希君……!」


丸テーブルを囲み、和やかに談話する人たち。

その向こうに、窓を眺めながら語り合う男女がいた。