BLACK TRAP ~あの月に誓った日~


今日も隙なく整った彼の横顔を見上げていたら、彼は何かに気づいたように険しい目つきをする。

目線の先は、校舎の外。


「……咲都」

「ああ、わかってる」


藤川の目配せにうなずいた咲都は、私たちの方を振り返る。


「ちょっと俺ら、人に会ってくるから、お前たちはこの階にいろよ」


早口でそう言い残し、先に歩き出していた藤川を追いかけていく。


「えっ。ちょっと、お兄ちゃん!」


焦った美愛が引き留めようとするけど、彼らの姿は人混みに紛れ、あっという間に見失ってしまった。


「……絶対にそばを離れるなとか言ってなかったっけ?」

「お兄ちゃんたちの嘘つき」


恨みがましく彼らの消えた方向へ舌を出し、すぐに気持ちを切り替えた美愛は辺りを見回した。


「仕方ない。二人だけで捜そっか」

「……だね。結局こうなるよね」


廊下の奥に『休憩室』の文字が見え、そこをとりあえず目指すことにする。



今日の美愛の服装は気合いが入っていて。
好きな人に会いに行くため、という乙女心が溢れていた。