BLACK TRAP ~あの月に誓った日~


線の細いその人は、私達がじろじろと不躾に見ていることも気にせず、にこりと綺麗に微笑む。


「3-5でヘアメイク・カフェをやっているので、良かったら来てくださいね」


パンフレットを差し出され、私と美愛は見惚れたまま、知らないうちに受け取っていた。

柔らかな声は男とも女ともつかない。


咲都と藤川は、なぜか眉をひそめてその人を見送る。



「え、ここ天国……? 桜花ってイケメン率高くない?」

「ほんとだね」


イケメンに目がない美愛は、キラキラと瞳を輝かせ周りを見渡し始める。

確かに、すれ違う人は皆、整った容姿の人ばかり。


伯王高がイケメンが少ないというわけじゃないけど。自分の高校のイケメンには免疫がついているというか。

たとえば曲り角でばったり会ってその麗しい顔を間近で見ても、そこまで驚きはしない。

ところが普段見慣れない顔だと、息を呑むほどの美しさにしばらく見惚れてしまうのだ。


「失礼だな、お前ら」

生徒会長のお怒りの声が降ってくる。


「いやー、あはは」

後ずさった美愛がひきつった笑顔で誤魔化す。


藤川だって、桜花のイケメンと充分張り合うレベルなのだけど。