BLACK TRAP ~あの月に誓った日~


「あははー、清楚になりすぎちゃった?」

「(よけい男が寄ってくるだろーが)」

「ねー、図書室にいそうな綺麗なお姉さんになっちゃったよね」


ボソボソ話していて私にはよく聞こえなかったけど。藤川は何かにイラついている様子。


「なるべく俺達から離れるなよ」


私を睨みつけるように振り向いた藤川は、低く言い捨ててから咲都と一緒に校舎へ入っていく。




ヤンキー校と聞いていたのに、思ったほど派手な人はいない。むしろまともな人の方が多い。

ごくまれにアッシュブロンドやピンク系の髪の人がいるくらいで。




昇降口を過ぎ、適当に廊下を進んでいると、向かいからとても目立つ人が現れた。


左肩に長い髪を流し、暗い紫色の浴衣を纏った美しい人。

浴衣には黒い蝶が描かれ、妖艶な印象だった。


「何、あの綺麗な人。男?女?」

「いやー……どっちだろ」


小声で聞いてくる美愛へ、曖昧に首を傾げる。

よく見れば、うっすらとメイクをしていて、赤い唇が艶めいている。

もはや性別を超越した存在だ。